イスラエルを象徴するフットワークの軽さ – 自動車からCOVID-19銘柄へ –
世界に自動車メーカーが乱立した時代に、イスラエルにもAutocars Co.という自動車メーカーがありました。この会社設立経緯の細かい話は別に譲るとして、イスラエルという国では手に入れられないものはサイエンスで解決する、自分達で作るという歴史があります。なお、同社はイスラエル国外への輸出などには繋げられず、結局、80年代に生産中止となったようです。
その後、イスラエルの自動車産業が日の目を見るのは30年以上後のことです。
自動車開発のノウハウが少ないイスラエルで、StartupであったMobileye(モービルアイ)社が、2014年にイスラエル史上最高の時価総額、$5.31Bでニューヨーク証券取引所へ上場しました。この時を前後して、政府が中心となりイスラエルは国を上げて自身をAutomotive Technology(Auto-Tech)の国として一気に売り出しました。
そして、以下のFTによる記事などが一斉に書かれて益々全世界からAuto-TechのStartupを求めて企業や資金がイスラエルを訪れるようになります。
そして、Automotive特化のFundも2号ファンドまで立ち上がりました。
しかし、過去の他分野のイスラエルのStartupが経験したのと同じ様に、皆が謳歌するような春はそう長くは続きません。
2019年にはAutonomous DrivingのLevel 4はHypeの坂から落ちてしまっており、
また、2020年の世の中は、突如襲ったCOVID-19でRemote Workを強いられ、自動車メーカーはCOVID-19以前に既に始まっていた厳しい業績が輪をかけて落ち込んでしまい、一気にAuto-Techへの熱が冷え込み、先行き不透明感が増しています。
しかし、元々イスラエルのAuto-Tech企業も自動車のノウハウは無く、他分野の技術者がアプリケーションを自動車向けにしただけのもの。COVID-19禍中でも適用出来る分野があれば、そこにPivotして事業を創るというのはある意味イスラエルのお家芸です。
以下、より顕著にDigital Healthに舵を切った企業に関連したプレスリリースをご紹介します。
イスラエルJungo社は文中の通り、2013年に米シスコシステムズ(シスコ社)の自動車ソフトウェア部門の分離により設立され、現Cisco Systems Inc.が保有する会社です。
正確には元々Jungo社は、NDS社というビデオ関連ソフトウェアを開発していたまた別のイスラエル企業に買収されています。
ただ、そのNDSも2012年にシスコ社がプライベート・エクイティのPermiraとメディア王のルパードマードック氏のニューズ・コーポレーション(News Corp.)から全株式を50億ドルで買収しています。(なお、同買収は上手く成果を上げることができず、シスコ社は2018年に再度PermiraにNDSを10億ドルで売却しています。)
買収後に、シスコ社はビデオ関連ソフトウェアの事業分野外とみなした自動車向けソフトウェア分野を切り離して別会社化していますが、Jungo社は成長を続け自動車車内のミドルウェアのシェアを広げたようです。
しかしながら、同分野はIT大手のAppleやGoogleが強く、次の事業分野を探すため、ドライバーモニタリングシステム(DMS)の開発を行っていたという経緯のようです。
それが、COVID-19銘柄として取り上げられた、というのが上記記事には載っていなかったJungo社の背景のようです。